おじさんの胸にキュンと来る (内田樹の研究室): "村上春樹は司馬遼太郎の跡を継ぐ「国民作家」なのであるが、それに気づいている人は少ないという話。
彼らは私たちの社会の深層に伏流している、邪悪で不健康な「マグマ」のようなものについて意識的である点で共通している。
『坂の上の雲』と『ねじまき鳥クロニクル』が同じ「マグマ問題」を扱っているということを言う人はあまりいないけど、実はそうなのである。
その「マグマ」のようなもの(司馬遼太郎はそれを「鬼胎」と呼んだ)は尊王攘夷運動や日比谷焼き討ちや満州事変やノモンハン事件や血盟団事件や60年安保闘争や全共闘運動や連合赤軍事件やオウム真理教事件などさまざまな意匠をまとってそのつど地殻を破って噴出してくる。
日本人の心性の深層にわだかまるこの熱価の高い衝動に触れない限り、日本人を集団的な熱狂のうちに巻き込むことはできない。
これを根絶することは不可能である。
してもいいけれど、仮に根絶できたとしたら、そのときに「日本人」というものはもういなくなる。
集団が成立する程度には熱狂的であり、暴力的・排他的に機能することを自制できる程度には謙抑的である「許容範囲」にこれをコントロールするのが、さしあたり日本の「大人」の仕事である。
そのためにはこの「どろどろして不健康で暗いもの」の機能と生態と統御についての技術的知が必要である。"
これは「名言」である。この「マグマ」のような集団的衝動が、われわれニッポン人を特徴づけてきた。昔は「軍国主義」、戦後は「猛烈会社員主義」、今は「出る杭をたたく弱者と環境にやさしい清く貧しい平等主義」。すべて同根である。
共通するのは、「金太郎飴」的な画一性と動き出すといっせいに噴出する「マグマ」的衝動。恐ろしいくらいだ。
戦前の日本は、この「マグマ」的衝動のおかげで、世界に冠たる軍事大国に「発展」した。
戦後の日本は、この「マグマ」的衝動のおかげで、世界に冠たる「経済大国」に発展した。
21世紀の日本は、この「マグマ」的衝動のおかげで、世界に冠たる「みんな平等で貧しいキューバみたいな官僚国家」に発展するではないか。
NHKを見ていると、月収が二十万円では体の不自由な親を介護施設に入所させることが出来ないので自分で面倒を見なければならない。これはシステムがおかしいとの趣旨の番組をやっていた。これは小泉改革のせいだとのこと。NHKなどのポリティカリーコレクトおばさんの言うとおりにやっていると「みんな一緒に清く貧しい社会」へまっしぐらである。こんなキューバ的社会はごめんである。
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